医師向け医薬品添付文書と処方のギャップ

・医師向け医薬品添付文書は、唯一の公式な薬の取り扱い説明書である。
・精神医療には、医薬品添付文書の記載内容を無視した処方が氾濫している。
・取扱説明書を無視した処方で起きた被害は、その処方した医師の明らかな注意義務違反である。

 医師向け医薬品添付文書とは、薬事法に基づき義務付けられた警告・使用上の注意、品目仕様その他の重要事項を記載した医師、医療関係者向けの製品情報記載書面である。
 2011年のイレッサ訴訟においては、この医薬品添付文書の記載の方法(記載の順序)が訴訟の焦点となっている。致死的副作用の記載に問題があり、それにより被害が広がったということが、問題となった。
 裁判所は、それを認め、国と製薬会社に賠償金の支払いを含めた判決を出した。現在、国も製薬会社も控訴中である。ここで留意頂きたいのは、この裁判が、医薬品添付文書の記載方法が十分であったかどうかを争っていると云う事です。
 この裁判でも、その記載方法が争点になるほど、医薬品添付文書の重要性が改めて確認されているということです。 医薬品添付文書に対する司法の判断は、次の最高裁判例でも、確認出来ます。

最高裁(最高裁第3法廷1月23日判決)

医薬品の添付文書の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者または輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が当該医薬品を使用するにあたって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される。

 精神医療では、この医薬品添付文書の記載事項を無視された処方が行われています。この医薬品添付文書の記載事項を順守していれば、被害の大部分は避けられたはずです。

例として、フルニトラゼパムの添付文書情報を参照してみましょう。
フルニトラゼパム医師向け添付文書
 フルニトラゼパムは、商品名はロヒプノール、サイレースで睡眠導入剤に分類されます。 まず見て頂きたいのは、その規制区分です。

向精神薬、習慣性医薬品、処方箋医薬品とあります。つまり、この薬は習慣性がある薬と云う事です。それ以上でも以下でもありません。連用すると依存すると云う事です。この依存性は、体依存です。多幸感をもたらす精神依存ではありません。離脱症状は、覚せい剤より重症となります。

 さらに、用量、半減期、相互作用、重大な副作用の情報が記載されています。 医師には、これらの使用上の注意を順守する義務があります。
 用量は、単剤の治験で決められた量であるので、他の薬と併用した時点で注意義務違反です。精神科処方薬の知識を参照ください。 多剤との併用が許されるのは、そのメリットがリスクを越える「合理的な理由」がある場合のみです。

 相互作用に関する情報には、併用注意と併用禁忌があります。 恐ろしい事に、日本の精神科では、慣習として併用注意の記載は無視されています。薬剤師も同様です。多剤併用により、その副作用が相加的に増強されているのにかかわらずです。
特に注意の必要な薬の組み合わせがあります。 薬の相互作用を参照ください。 この薬を、こうした説明が無く処方する事は、明らかな注意義務違反です。


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